2024年元日に発生した能登半島地震で、あらためて地震への備えの大切さを感じた方も多いのではないでしょうか。日本ではほかにも「30年以内に70〜80%程度の確率で起きる」とされる南海トラフ地震など、多くの大規模地震の発生可能性が指摘されています。
こうした、いつどこで大地震が起きても不思議ではない状況のなか、家づくりにおいても「地震に強い家」にしたいと考える方がますます増えています。地震に強い構造というと「制震構造」「耐震構造」「免震構造」などがありますが、どうしても違いがわかりにくいものです。
この記事では、一般住宅にも普及しつつある「制震構造」の仕組みを紹介するとともに、免震構造・耐震構造との違い、制震構造のメリット・デメリットについても解説します。この記事を読めば、地震に強い各構造の特徴がわかり、地震に強い家づくりのポイントを理解できるでしょう。
制震(振)構造とは?
地震の揺れに対応する建物構造には「耐震構造」「免震構造」「制震(振)構造」の3種類があります。
このうち以前から一般的だったのは、耐震構造です。耐震構造は、建物自体の強度を高めることで地震の揺れに対応する構造で、従来型の耐震構造は建物全体で揺れに対応するのが特徴です。建物内にいる人の命を守ることを最優先としています。
従来型の耐震構造では人命を守ることができても、地震後すぐその建物で安心して生活することは考慮されていませんでした。ここに地震後の生活の継続可能性や安全性を上乗せする形で進化してきたのが、制震構造と免震構造の2つです。
制震構造は、建物の柱や壁に制震装置(ダンパー)などを設置することで、地震のパワーを吸収して揺れを軽減させます。これにより、建物の倒壊や損傷などを防ぎます。地震のほか強風による揺れなどにも有効であることから、揺れの影響を受けやすいタワーマンションや超高層ビルでおもに用いられてきました。
制震構造は免震構造に比べてコストを抑えられることから、一般住宅でも導入しやすいために普及しつつあります。
耐震構造は地震に強い?メリット・デメリット、制震・免震との違いも解説▶
制震(振)ダンパーとは?
制震構造の鍵となるのが、建物に設置される制震ダンパーです。制震ダンパーとは、素材の弾力性や抵抗力などを利用して、建物にかかる地震エネルギーを吸収して揺れを抑える装置のことをいいます。
制震ダンパーを取り入れた家づくりにより、建物内部への揺れを軽減することが可能です。地震による建物自体へのダメージを抑えられるほか、倒壊リスクの軽減によって、その家に住む人の安全性向上も期待できます。
制震(振)ダンパーの種類
制震ダンパーには「粘弾性型ダンパー」「油圧ダンパー」「鋼材ダンパー」の3種類があります。種類ごとに特徴を紹介しましょう。
【粘弾性型ダンパー】
粘弾性型ダンパーは、ゴムやアクリル、シリコンなど粘弾性のある物質によって、地震エネルギーを吸収するタイプのダンパーです。ほかのダンパーに比べて導入コストが安く、小さな揺れから大きな揺れまでさまざまな揺れを小さくする効果が期待できます。小さな地震でも有効なので、住まいの安全性・機能性のほか、日常の居住性も格段に向上するでしょう。
一方、使用するにつれて粘弾性が弱まることや、夏場の高温時などに粘弾性が損なわれるリスクがあることには注意が必要です。
【油圧(オイル)ダンパー】
オイルで満たされたシリンダーとピストンからなる筒状のダンパーが油圧ダンパーです。地震などの振動が加わるとピストンが動き、シリンダー内のオイルを押すことで揺れのエネルギーを吸収します。
油圧ダンパーは劣化したり損傷したりしにくいので、大きな地震があっても繰り返し使えるほか、小さな揺れから効果を発揮するのがメリットです。装置自体が小型なので設置場所を選ばず施工が簡単なうえ、中古住宅への後付けが容易という利点もあります。
ただし、油圧ダンパーは構造が複雑、かつ設置本数が多くなるためコストが高くなる点はネックです。
【鋼材ダンパー】
鋼材ダンパーは、その名のとおり鋼などの金属から作られたダンパーです。金属が揺れによって曲がった際に発生する力を熱エネルギーに変換することで、地震の揺れを抑えられます。
鋼材ダンパーは導入コストが比較的安い点、構造がシンプルゆえに定期的なメンテナンスを必要としない点がメリットです。小さな地震にはあまり効果が期待できず、おもに大地震への備えとして設置されます。
ただし、金属は何回も曲げるとエネルギーを吸収しにくくなるため、大地震に繰り返し遭遇すると効果が弱まる可能性があることには注意しましょう。
免震構造との違い
耐震構造に安全を上乗せする形で登場した制震構造と免震構造ですが、両者はどのような違いがあるのでしょうか。免震構造の特徴、メリット・デメリットを踏まえて解説します。
免震構造の特徴
免震構造と制震構造には共通点があります。それは、従来の耐震構造のように建物全体で地震の揺れに対応するわけではないという点です。
免震構造は建物と基礎の間に、アイソレータと呼ばれる積層ゴムやローラーなどを入れた免震層を設け、地震の揺れそのものを建物に伝わりにくくする構造です。
免震構造と制振構造の大きな違いは、揺れに対する対応の仕方にあります。制震構造は制震装置によって建物に伝わる地震エネルギーを吸収することで、建物の揺れ幅を小さくしてダメージを軽減する構造です。これに対し、免震構造はそもそも地震の揺れを建物に伝えないようにする構造である点が異なります。
免震構造のメリット
免震構造は、建物と地面を切り離すことで地震による揺れを大幅に小さくできるため、建物の損傷や家具の倒壊を最小限に抑えることができます。特に横方向の揺れに強く、地震が起きても建物の揺れはかなり限定的です。大規模地震にも対応しており、内装や家具への影響が小さいので、地震後も生活し続けられるのは大きなメリットといえるでしょう。
また、住んでいる人が揺れを感じにくいので、普段から安心して暮らせるというのも免震構造の家の魅力です。
免震構造のデメリット
地面と切り離されているために横方向の揺れに強い免震構造ですが、縦構造の地震の揺れには弱いのが特徴です。また、耐震構造や制震構造と比較すると台風などの強風でも揺れを感じやすく、基本的に地盤が軟弱な土地には不向きとされている点は注意しましょう。
免震構造はコスト面でもデメリットがあります。ほかの構造に比べてイニシャルコストが高いうえ、免震装置の定期的なメンテナンスも必要です。住宅の大きさによるものの、1回のメンテナンスで300〜600万円程度かかることもあります。
工事に関する課題もあり、まず戸建て住宅で免震構造を施工できる会社は限られています。地下室を作れないという間取り上の制限も発生するため、導入する際は家づくりの予算感や希望プランなどと照らし合わせて、慎重な検討が必要です。
制震(振)構造のメリット
制震構造と免震構造の違いがわかったところで、制震構造のメリットについて詳しく解説しましょう。
上階の揺れが最小限に抑えられる
タワーマンションや超高層ビルなど高さのある建物では、地震の際、上の階に行くほど揺れは大きくなります。制震構造にすることで、こうした上の階の揺れを最小限に抑える効果が期待できます。タワーマンションで制震構造が多く採用されるのは、上層階の揺れを抑えられるためです。上階の揺れが抑えられることにより、地震による家具の転倒予防にもつながります。
導入コストが安く、メンテナンスが容易
制震構造は導入コストが安い点も大きな特徴です。新築戸建ての場合、建築基準法により耐震基準を満たすことが義務付けられていることから耐震費用は本体価格に含まれます。追加で制震構造を導入する場合、1棟につき50万円程度の費用で導入できます。免震構造にしようとすれば200万円程度かかるケースが多いことを考えると、いかに制震構造がリーズナブルかわかるでしょう。
また、鋼材ダンパーを使用すればメンテナンスは原則必要ありません。粘弾性ダンパーや油圧ダンパーは定期的なメンテナンスが必要ですが、免震構造のような大きな費用がかかるものではないので、メンテナンスコストはかなり抑えられます。
台風などによる揺れにも強い
制震構造はダンパーによって建物の揺れ自体を抑える効果があるため、台風接近時などの強風による建物の揺れも抑えてくれます。建物が地面から切り離された状態にある免震構造で、強風によって建物が揺れてしまうことがあるのとは対照的です。
そのため、台風がよく接近するエリアや強い風が吹きやすいエリアにある住宅では、制震構造の導入が向いているでしょう。
建物の損傷リスクが低い
建物は縦にかかる力よりも横方向の力に弱く、地震時に横揺れが起こると倒壊しやすくなります。横揺れによる影響をいかに抑えるかによって、耐震性が大きく変わるといえます。
制震構造ではダンパーが地震の揺れを吸収し、建物に伝わる横揺れのパワーを軽減します。住宅にダメージが蓄積するのを防げるため、地震によって建物の構造部が劣化するのを防止できるのもメリットです。
一般的な耐震構造は、繰り返しの揺れに遭遇すると構造部にダメージが蓄積されるため、揺れに遭うたびに耐震性が落ちていくことになります。長く安心して暮らしたいなら、制震構造が有力な選択肢になるでしょう。
制震(振)構造のデメリット
建物に伝わる揺れを抑えることでさまざまなメリットが得られる制震構造ですが、気をつけるべきデメリットも存在します。導入時には、次に紹介するデメリットも十分に理解したうえで判断するようにしましょう。
装置の設置場所などによって効果が発揮されない
制震構造を導入するにあたっては、制震装置の位置と数に注意を払う必要があります。適切な位置に適切な数の制震装置を設置しないと、十分な制震効果が発揮されないことがあるためです。制震構造は建物に使われる建材の種類などとも相性の良し悪しがあるので、建物構造や地盤条件に合わせて設計する必要があります。
また、中古住宅に制震装置を後付けする場合、新築時に設置するよりも耐震性が劣るため、できる限り新築時に導入しておきましょう。
併せて、「在宅避難」についても考慮しておきましょう。
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地盤の状態によっては導入が難しい
建物と地面が切り離されている免震構造と異なり、制震構造は建物が地面と接しているため、地震時も地盤の影響を受けやすい点も注意が必要です。地盤が弱いと揺れの吸収が十分に行われないため、制震構造が持つ本来の効果を発揮できない可能性があります。
新築住宅の場合、地盤が弱ければ地盤改良を行うのでそれほど問題になりませんが、念のため地盤の強度が十分か、弱い場合にはしっかり補強されているかを確認しましょう。
トヨタホームの住まいは「耐震」で大地震に強い!
従来の耐震構造に、地震後の日常生活の継続可能性や安全性を上乗せしたのが制震構造と免震構造です。このうち制震構造は上階の揺れや建物全体の損傷リスクを低減することができるうえ、免震構造に比べてリーズナブルに施工できるメリットがあります。制震構造を取り入れた戸建ては、より地震への耐力が強いと考えられるでしょう。
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